AI ナビゲーション ユースケース調査
調査レポートAIロボット・AIグラス・音声誘導を組み合わせた屋内ナビゲーションの4つのユースケースについて、 必要な技術・実現可能性・課題・ロードマップを整理しました。
🤖 ケース1: AIロボットが
自律的に環境を学習
360度カメラ・LiDAR・IMUを搭載したロボットが施設内を巡回し、 Visual SLAM で3D環境マップを自動構築。人間の手を借りずに 廊下・部屋・POI(施設ポイント)を学習し、ナビゲーション用の 高精度マップを生成します。
必要技術
Visual SLAM 必須
カメラ/LiDAR映像から特徴点を抽出し、自己位置推定と環境地図構築を同時に行う。ORB-SLAM3, RTAB-Map等が代表的な実装。
✅ 実用段階LiDAR センサー 必須
レーザーで距離を測定し、高精度な3Dポイントクラウドを生成。Velodyne, Ouster, Intel RealSense L515など。2D LiDARでも基本的なマッピングは可能。
✅ 実用段階360° カメラ 必須
全方位を同時に撮影し、特徴点の見落としを防止。Ricoh THETA, Insta360等。通常のステレオカメラでも可だが、視野角が限定される。
✅ 実用段階IMU / 車輪オドメトリ 必須
カメラ/LiDARが一時的に使えない場合(特徴のない廊下等)の位置推定バックアップ。SLAMと融合してロバスト性を向上。
✅ 実用段階自律移動プラットフォーム 重要
ROS (Robot OS) ベースのナビゲーションスタック。move_base, Nav2でパスプランニング・障害物回避を実現。
✅ 実用段階セマンティックマッピング 重要
「トイレ」「エレベーター」「受付」等の場所の意味をAIが自動認識。物体検出 (YOLOv8) + 看板OCRで名称も自動取得可能。
⏳ 発展途上クラウド処理 推奨
大規模施設のマップデータをクラウドで統合・最適化。エッジ処理で基本動作しつつ、詳細処理はクラウドで実行。
✅ 実用段階フロア間移動 推奨
エレベータロボットAPI連携、気圧計によるフロア検出。多層マップの統合はまだ標準化されていない。
⏳ 発展途上📋 処理フロー
実例 / 製品
🏢 Boston Dynamics Spot
自律巡回で施設点検・3Dマッピングを実現。360°カメラ+LiDAR搭載。建設現場で実用化中。
🏗️ NavVis VLX
ウェアラブルLiDARマッピングシステム。ロボットではないが、歩行ベースで高精度な屋内3Dマップを生成。
🛒 Brain Corp
商業施設の清掃ロボットが巡回中に屋内マップを副次的に生成。Walmartなどで導入実績あり。
📦 Amazon Scout / Kiva
倉庫内ロボットが自律的に棚配置を学習し、最短ルートで商品を運搬。SLAMの大規模実用例。
⚠️ 課題: 動的環境への対応
人の流れや家具の移動でマップが陳腐化する。定期的な再マッピングまたは動的物体のフィルタリングが必要。
⚠️ 課題: 大規模施設のスケーラビリティ
空港やショッピングモール級(数万m²)の施設では、マップデータが膨大になり処理時間も増大する。
SLAM + PDR + 音声誘導の統合コンセプトをインタラクティブに体験
🧑🏫 ケース2: AIグラスをかけた
人間が音声で場所を教示
カメラ付きAIグラスをかけた人間が施設内を歩きながら、 「ここがトイレ」「この先を右に曲がると会議室A」のように 音声で場所の情報をAIに教え込みます。 カメラの映像と音声認識を組み合わせ、 Visual Positioning + セマンティックマップを構築します。
必要技術
Visual-Inertial SLAM 必須
グラスのカメラ+IMUで歩行経路と環境をリアルタイムにマッピング。ARKit/ARCore の技術がベース。Apple Vision Pro, Meta Quest 3 等に搭載済み。
✅ 実用段階音声認識 (ASR) 必須
リアルタイム音声→テキスト変換。Whisper, Google Speech-to-Text等。「ここが〇〇」形式のコマンド認識には高い精度が必要。
✅ 実用段階自然言語理解 (NLU) 必須
音声コマンドから「場所名」「方向」「ランドマーク」を抽出。LLM (GPT-4o等) で高精度な意図理解が可能に。
✅ 実用段階カメラ付きARグラス 必須
前方カメラ + ディスプレイ + マイク + IMU。Meta Ray-Ban, Vuzix, Xreal Air等。処理はスマホ/クラウドにオフロード。
⏳ 発展途上Visual Place Recognition 重要
「この場所を前に見たことがある」をAIが検出。NetVLAD, CosPlace等のディープラーニング手法。ループクロージャに使用。
⏳ 発展途上空間アンカー 重要
音声で名付けた場所を3D空間座標に固定。Azure Spatial Anchors, Google Cloud Anchorsが該当。永続的な位置記録を実現。
✅ 実用段階📋 処理フロー
⚠️ 課題: グラス側の処理能力
現行のARグラスではSLAM処理をエッジで完結させるのが困難。スマホ/クラウドへの接続が不可欠で、遅延やバッテリー消費が問題。
⚠️ 課題: 音声の曖昧さ
「あっちの方」「少し先」など、曖昧な表現をSLAM座標系に正確にマッピングするのは難しい。文脈理解AIが必要。
💡 利点: 直感的なマッピング
技術者でなくてもマップを作成できる。施設スタッフが「案内するように」歩くだけでマップが完成する理想的なUX。
💡 利点: 人間の知識を活用
「この通路は業務用」「車椅子はこちら」など、ロボットでは判断困難なコンテキスト情報を付加できる。
🥽 ケース3: AIグラスに
道順をAR表示
事前に構築した屋内マップ上で経路を計算し、 ARグラスの透過ディスプレイに矢印・ハイライトで リアルタイムに道順を重畳表示します。 「床に矢印が見える」ような直感的なナビゲーションです。
必要技術
AR透過ディスプレイ 必須
現実世界に仮想の矢印を重ねて表示。導光板方式 (HoloLens, Xreal) やBirdbath方式。視野角の広さが体験を左右する。
⏳ 発展途上VPS (Visual Positioning System) 必須
カメラ映像からcm精度で自己位置を特定。Google VPS, Niantic VPS が先行。事前マップとのマッチングが必要。
⏳ 発展途上経路探索エンジン 必須
A*アルゴリズム or ダイクストラ法で最短経路を計算。フロア間移動、バリアフリー経路の考慮が必要。
✅ 実用段階3D レンダリング 必須
矢印・ハイライトをカメラ映像に正確に重畳。オクルージョン(物体の手前/奥の判定)処理も重要。
✅ 実用段階屋内地図データ 重要
ケース1/2で構築したマップ、または既存のBIMデータ。通路・壁・POIの構造化データが必要。
⏳ 発展途上ジェスチャー操作 推奨
手のジェスチャーで目的地変更やルート再計算。ハンドトラッキング (MediaPipe等) で実現可能。
⏳ 発展途上📋 処理フロー
⚠️ 課題: AR精度(ドリフト)
長距離移動するとIMUドリフトにより矢印の位置がずれる。VPSによる定期補正が不可欠。
⚠️ 課題: 視野角の狭さ
現行ARグラス(HoloLens 2でも約52°)は視野角が狭く、床面の矢印を見るには視線を下げる必要がある。
⚠️ 課題: 装着の心理的ハードル
一般の来訪者にARグラス装着を求めるのは、現状ではハードルが高い。軽量・ファッショナブルなグラスが必要。
💡 利点: 最も直感的なUX
地図を読む必要も、スマホを見る必要もない。視線の先に道順が見える、究極的なナビゲーション体験。
🗣️ ケース4: 音声で道順を
リアルタイム誘導
カメラ付きAIグラスまたはスマートフォンを使い、 音声でターンバイターンの道案内を行います。 「10メートル直進して、右に曲がってください」のように、 現在位置に応じたリアルタイム案内です。 最もハードルが低く、視覚障碍者にも対応可能な手法です。
対応デバイス別の特徴
📱 スマートフォン 最も実用的
全員が持っている最もハードルの低いデバイス。カメラ+IMU+BLE+Wi-Fiが内蔵済み。Google Live View (屋外) の屋内版が理想。PDR+Wi-Fiで位置推定。
✅ 即座に可能🥽 AIグラス(カメラ付き) 高精度
VPSをハンズフリーで常時実行可能。音声+AR表示のハイブリッドが可能。ただし高価&バッテリー問題。Meta Ray-Ban, Xreal Air 2 Pro等。
⏳ 発展途上💻 携帯PC / タブレット 業務用途
業務用ナビ(倉庫ピッキング等)で使用。音声+画面表示。処理能力は高いが、両手がふさがる問題。
✅ 即座に可能必要技術
屋内測位 必須
Wi-Fi/BLE/PDRのハイブリッドで連続的な位置推定。精度1〜3mあれば音声案内に十分。ケース2/3ほどのcm精度は不要。
✅ 実用段階Text-to-Speech (TTS) 必須
経路指示をリアルタイムで音声合成。Google TTS, Apple AVSpeechSynthesizer, VOICEVOX等。多言語対応も容易。
✅ 実用段階経路探索 + ターン検出 必須
屋内マップ上の最短経路を計算し、「右折」「左折」「直進」を適切なタイミングで発声。PDRの方位情報で進行方向も提示。
✅ 実用段階音声対話 (会話AI) 重要
「途中にトイレはありますか?」「もう少し詳しく教えて」等の質問に答える。LLM+マップ知識で実現可能。
✅ 実用段階📋 処理フロー
📱 Google Maps 屋内ナビ
一部の大規模施設(空港、ショッピングモール)で屋内のターンバイターンナビが実現済み。Wi-Fi+PDRベース。
🏥 Mazemap / MerIDian
病院・大学向け屋内ナビARSOlution。BLEビーコン+スマホアプリで音声案内を提供。多数の導入実績あり。
👁️ Microsoft Soundscape
視覚障碍者向け3Dオーディオ屋外ナビ。屋内版の研究も進行中。空間音響で方向を知らせる革新的UX。
🏭 Honeywell Voice
倉庫ピッキング向け音声ガイダンスシステム。作業員がヘッドセットで指示を受けながら両手で作業。20年以上の実績。
SLAM + PDR + 音声誘導の統合デモで実際のイメージを掴む
📋 4ユースケース 総合比較
| 項目 | 🤖 ロボット自律学習 | 🧑🏫 人間が音声教示 | 🥽 グラスにAR道順 | 🗣️ 音声誘導 |
|---|---|---|---|---|
| 主要デバイス | 自律移動ロボット | ARグラス + マイク | AR透過ディスプレイ | スマホ / グラス / ヘッドセット |
| コアセンサー | LiDAR + 360°カメラ + IMU | カメラ + マイク + IMU | カメラ + IMU + ディスプレイ | Wi-Fi + BLE + IMU |
| コアAI技術 | Visual SLAM, セマンティック認識 | ASR, NLU, Visual SLAM | VPS, AR描画, 経路探索 | 測位, TTS, 経路探索, LLM |
| 位置精度要求 | cm級(マップ構築用) | 10cm〜1m(教示用) | cm級(AR重畳用) | 1〜3m(道案内に十分) |
| 初期コスト | 高(100〜500万円) | 中(5〜30万円) | 高(10〜50万円/台) | 低(既存スマホ利用可) |
| 運用の手軽さ | ⭐⭐⭐⭐(自動) | ⭐⭐⭐(人手が必要) | ⭐⭐(グラス配布要) | ⭐⭐⭐⭐⭐(スマホのみ) |
| ユーザー体験 | (マップ構築目的) | 教える側は直感的 | ⭐⭐⭐⭐⭐(最も直感的) | ⭐⭐⭐⭐(ハンズフリー可) |
| 実現可能性 | 85%(すでに実用例多数) | 65%(技術は揃うが統合が課題) | 55%(ARグラス性能待ち) | 80%(スマホなら今日から可能) |
| 想定用途 | 施設の初期マッピング | マップ更新/カスタマイズ | プレミアムナビ体験 | 汎用ナビ/アクセシビリティ |